ピロリ菌感染

ピロリ菌はらせん状をした細菌で、4~8本のしっぽをヘリコプターのように回転させて移動することから、ヘリコバクター・ピロリと名付けられました。 胃の中は酸性が強く、生物が生きていけるような環境ではありませんが、ピロリ菌はウレアーゼという酵素で胃酸を中和する事により、胃に住むことができます。

日本では40歳以上で約70%の感染率で、全国民の約半数が感染しており、ほとんどが幼少時に感染するといわれています。

ピロリ菌除菌治療は抗生剤と胃酸分泌を抑制する薬を1週間服用します。ピロリ菌は胃潰瘍や十二指腸潰瘍、慢性(萎縮性)胃炎、胃がん、胃MALTリンパ腫の発生や進行に関係しています。除菌する事により胃潰瘍、十二指腸潰瘍の再発は減り、慢性胃炎の方は胃がんの予防効果があると考えらています。

そして、これまでピロリ菌の除菌治療は、胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの病気のみに健康保険が適用されていましたが、2013年2月21日から「慢性胃炎」も健康保険の対象に加わりました。

ピロリ菌の検査にはピロリ菌感染の判定や除菌治療後の効果判定など目的に応じ、様々な検査法があります。

  • 迅速ウレアーゼ試験
    生検で採取した組織の中にいるピロリ菌のウレアーゼ活性を利用した検査法です。結果判定まで短時間で、しかも安価なため、胃内視鏡検査で潰瘍を認めた際に同時に行われることが多いです。除菌後の判定にはあまり向いていません。
  • 尿素呼気試験
    これもウレアーゼ活性を利用した方法ですが内視鏡検査の必要はなく、呼気(息)で調べる方法です。除菌後の判定にも有効で、現在最も用いられています。
  • 鏡見法
    生検で採取した組織の中にいる菌を顕微鏡検査で確認する方法。
  • 培養法
    生検で採取した組織の中にいる菌を育てて診断する培養法。
  • 血中抗ピロリ菌抗体測定
    採血を行い、血液中の抗ピロリ菌IgG抗体を調べます。薬の影響を受けないため、潰瘍治療薬を服用中あるいは中止直後の感染診断に有用です。一方、除菌に成功すれば抗体価は低下しますが、完全に低下するには1年以上を要するため、初期の除菌判定には適していません。
  • 尿中抗ピロリ菌抗体測定
    尿検査なので負担が少なく、人間ドックや検診などのスクリーニングに有効です。
  • 便中ピロリ菌抗原測定
    便中のピロリ菌抗原を調べる方法で、負担がなく小児での検査も可能です。